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★ 近づいて行くとそれは紛れもなくあの長身のナンディ君で、オイラとかみさんを見つけるとニコリと微笑んだ。
「ええ? どうしたの? ずーっと待ってたの?」
「はい」
「うわー、それは悪かったね。電話してあげればよかったね」
「大丈夫です、トゥクトゥクで昼寝していましたから」
「Sorry. Very Sorry」
「No, No sorry. You are my friend. No sorry」
そして彼は近くにあるカフェまで乗せて行ってくれた。
そりゃ、そうだ。
行かないなら行かないと連絡してあげるべきだった。
「行く時には電話するから」
なんて言われても電話があった時のことを考えれば近くでスタンバイしていなければいけないもの。
かみさんと入ったカフェで冷たいインドビールを頼んだ。
一杯ごくりとやりながら、
「すでに500ルピーはもらっちゃったんだから、電話があろうとなかろうと次のお客を乗せようと思えば少しでも稼げたのに 」
「あんな酷暑の中、ずっと外で待ってたんだね」
なんて話していたら、なんか要領の悪いウチの息子とも影がダブって2人とも涙が出てきてしまって。
それでもチキンビリヤニやバターチキンが驚くほど美味しくて、もうなんだか泣き笑い。
翌朝、チェックアウトを終えて外に出てみると、ゲートの外でナンディ君が手を振っていた。
「今日はとても大きな祭があるんです。もう1日あれば見せてあげられたのに」
「そう、それは残念だ」
空港まで送ってもらって別れ際にナンディ君と記念写真を撮った。
「今撮った写真をあとでケータイに送ってもらえますか?」
「うん、送るよ」
「My friend ! きっとまた来てね!」
名残惜しく手を振ってナンディ君と別れ、ターミナルへ入っていった。
翌朝、ナンディ君からオイラのケータイにメッセージが入った。
「Good morning my friend. Next time you come back.」
晴れ晴れしく祭に参加している彼の写真と一緒に。