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★ 前の晩はクタクタだったので朝7時の出発は現実的ではなかったかと少し後悔したが、なんとかナンディ君の待つゲートで時間通りに落ち合えた。
この時期のインドは日中の気温45度近い猛暑で、地元の人でも出歩くのを避ける。
耐性のないタコが日陰のない遺跡を上ったり降りたりすればあっという間に大阪名物になってしまうため無理は禁物。
だが、朝のうちや夕方は気温も下がり、空気が乾燥しているせいでむしろ涼しく爽やかにさえ感じるのだ。
我々は7時から10時過ぎまであちこちの遺跡を回った。
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この地の遺跡で有名なのはミトゥナ像(男女交合のエロティックな彫刻)を含む官能的なレリーフ群で、あからさまで大胆な性行為の情景が神々しく彫られ、芸術的評価が高い。
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遺跡群の間にあるカジュラホの村も訪れ、民家の中を見せてもらった。
彼らは自分たちの生活を見せることで幾ばくかの収入を得る貧しい暮らしをしている。
でもおばあちゃんと孫娘で焼いてくれたチャパティは熱々で美味しかった。
次第に気温も上がってきて、遺跡がどれも「ただの古くて汚れた石」に見えてきた頃、一旦ホテルに戻ることにした。
遺跡にカメラを向けても遺跡を撮っているんだが、犬を撮っているんだかだんだんわからなくなってきた。
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「午後は3時頃迎えにきます。残りの遺跡を回ります」
ナンディ君はまだまだ僕の村には素晴らしい遺跡がたくさんあるんだ、と言っているのだが、正直なところオイラもかみさんもここまで毎日がずっと厳しい移動の旅だったので午後は少し休みたかった。
そこでナンディ君には500ルピーはここで支払うので一旦お開きにしようと伝えた。
ただ、もしかしたらまたムクムクと気力体力が充実し、
「よしっ、あと10ばかり古っちぃ石寺登ったろかい!」
となるやもしれぬので、
「もし、また夕方から回りたくなったら電話をするから」
と彼の電話番号を教えてもらい、その場で通話テストも行った。
「わかりました。ゆっくり休んでください」
「それから念のため明日は空港まで送ってね。午前11時にまたここで」
「もちろんですよ」
オイラとかみさんはナンディ君とゲートで別れ、
「ナンディ君、午前中だけで500ルピー稼げたからよかったね」
「でも、トゥクトゥクのオーナーから1日100ルピーしかもらえないらしいよ」
「そりゃツラいね。でも500ルピーもらったって言わなきゃよくね?」
などと話しながらホテルの部屋に戻った。
遅い朝食をとった後は、部屋で少し眠ったり、誰もないプールサイドで本を読んだり、本当にリラックスした1日を過ごした。
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夕方6時過ぎ、そろそろ腹も減ってきたのでネットでも美味しいと評判だった近所にあるインドカフェに散歩がてら行ってみようと部屋を出た。
ホテルのエントランスを出て、ゲートに向かって歩いていると、ゲートの向こうにナンディ君らしい人影が立っているのが見えた。
(その7につづく)