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★ 日曜日、近所にあるベンチャキティ公園の池で娘が子供たちと白鳥型の足漕ぎボートで遊んでいた。
ここしばらくボート池は水位が下がっていてところどころ池底が顔を出していた。
足漕ぎボートは途中で池底に乗り上げてしまい、動けなくなった。
娘は大声で管理棟に助けを求めたが係のおばちゃんはどうすることもできずに桟橋でうろうろするばかり。
そこに遠くにいた別の足漕ぎボートが近づいてきた。
同様に子供を乗せた日本人のお父さんのようだった。
彼は自分の身も顧みず、自分の足漕ぎボートから池に飛び降りると、下半身をびしょびしょにしながら娘のボートに近づくと、全力でボートを水のある方へ押し返してくれた。
岸に戻ってお礼を言うと、やはり彼は日本人の父親だった。
「こんなになってまで本当にありがとうございました」
と頭を下げる娘にこのお父さんはこんな話をした。
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「実は、今日ここへ来るまでの道で、前の車におカマを掘っちゃったんです。後部座席の子供たちが騒ぐものだからちょっと後ろに気をやった途端にドンっ!と。やっちゃたー!と思って外に出ると、前の車からも運転していた男性が出てきました。彼は日本人でした。そして彼はこう言ったんですよ。
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『出てって怒鳴ってやろうと思ったけど、あなたも日本人のお父さんですね。私も子供を後ろに乗せますのであなたの事情はわかります。こういうことありますよね』
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先方の車は凹んで傷がついているんですよ。それでも彼は「いいですよ」と何も求めずに去って行きました。私は善意に助けられたんだと思いました。そして今度は自分が困っている人を助けようと思っていたんです。そうしたらあなたが助けを求めていたんです。だから私があなたを助けたのは当然なんです」
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と。
この話に感動した娘は家に帰ってくるとオイラに早口で伝えた。
「お父さん、私は今人を助けるよ! どこかに困ってる人はいないの? ったくどこで何やってんだ!助けたいのにガルルルルルルル・・・」
と唸っている。
これは近づいていいものなのかどうなのか・・・