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★ 西荻の実家の弟からバンコクのオフィスの仕事中にテレビ電話が入り大声で
「これから夕ご飯なのに親父が入れ歯を入れるのを嫌がるんだよ。洗うのが面倒だと。それじゃご飯作れないよ、って言ったら『はい、けっこうです、私は食べません』とどうにもならないんだよ。Junから親父に話してくれよ」
とまくし立てられ、スタッフはみんなこちらを見るし、たいそう気まずい思いをしながら会議室に逃げ込んだ。
親父が画面に映ると
親父「私は嫌だと言ってるんだ。これにポリグリップ塗っても食べられないんだよ」
弟「だけど僕がいろんな歯医者に訊いたけど、みんなポリグリップするしかないって」
親父「そんなの私は直接聞いてないもの」
弟「でも息子の僕が言ってるんだよ、信じられないの?」
親父「歯医者がインチキなんだよ」
延々と続く会話のどこでオイラは入ればいいんだとしばらくずっと聞いていた。
弟「ちょっとJunからも言ってよ」
オイラ「ちょっと嫌かも知れないけど次の入れ歯を作るまで頑張ってそれでご飯食べようよ。今まで入れ歯つけて食べてたからこないだ会った時よりもふっくらと元気そうじゃないの。」
親父「元気そう?そうかい、それはありがとうね」
オイラ「まだまだ元気でいてもらわないと。そのためにはちゃんと食べることだよ。死んでもいいから食べない、とか言わないの。おふくろの分まで生きるんでしょ」
親父「はいはい、そうだね、ちゃんと食べるよ」
と言って入れ歯にポリグリップを付けると口の中に着装した。
弟「ありがとう」
オイラ「はい、じゃあ、またね」
最近、タコ社長は仕事もいろいろ大変だけど、家族もいろいろ大変だわな。