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★ 資金繰りに苦労している最中にマレーシアでは取引銀行との手違いで会社の銀行口座が閉鎖されてしまった。
オイラがバンコクにいてKLを不在にしている期間に銀行からの緊急連絡がつかなかったためだ。
口座のある支店に行き担当者に事情を話しても
「一旦クローズされたら我々にはどうにもできない」
とけんもほろろに言われたが、ウチもここを閉じられるとクライアントとの取引ができなくなるので食い下がる。
支店長とも相談した担当者から
「では、アピールレターを提出してみなさい。我々支店ではどうにもできないが、本店にそのレターを諮り、本店が精査した上でバンクネガラ(日本でいう日銀)に本店からアピールするかどうか決定する。どちらにしてもバンクネガラの管理下なので我々には決定権はない」
と限りなく細い糸が垂らされた。
なんとも頼りない糸だが、これを手繰って登るしかない。
翌日事情説明と一刻も早い口座の再開設が必要だという旨のアピールレターを同じ担当者に提出。
そしてその翌日である今日、朝一でこの支店の支店長に面会を申し入れる。
面談で再度事情を説明し、なんとか計らって欲しいと頭を下げるが、
「アピールレターは昨日時点で本店に送付した。あとは本店がどう判断するか、またバンクネガラがどう判断するかで我々支店レベルでは何もできない。とにかく1ヶ月待て」
と言うばかり。
1ヶ月・・・
これから中国正月もあるのにそんなに待てないよ。
そこで、一旦オフィスに戻るとベロニカと一緒に直接バンクネガラに乗り込むことにした。
日銀に当たる中央銀行がこんな末端の事案をいちいち聞いてくれるとは思えないが、とにかく指をくわえて1ヶ月待っているわけにはいかないのだ。
30年近くマレーシアに関わりながら一度も足を踏み入れたことのない荘厳な石造りの建物。
ゲートで数ある建物の中のどのビルかを確認し、エントランスのセキュリティを通る。
そこは3階ほどの吹き抜けのホールで壁際に対応デスクが置かれて銀行員が座っている。
受付で事情を説明すると1番のデスクに通され、インド系マレーシア人の女性担当者と話をすることができた。
オイラとベロニカでアピールレターやビジネス状況を示す書類を見せながらここに来た事情を説明する。
すると、バンクネガラの担当者は
「それはおかしいわね。顧客の口座管理をするのはあくまで銀行側で私たちが閉鎖や開設の承認をするようなことはないんですよ」
と銀行側の説明とは明らかに異なる説明をしてくれる。
「でも、事情はわかりました。私からその銀行の本店に今電話してみますね」
と、すぐにデスクの電話で取引銀行本店に電話を入れてくれる。
しばらく彼女が事情を説明した後で、我々が電話を代わった。
本店の担当者は自分の顧客の件でバンクネガラから直接電話をもらい、すでに大いにビビっていた。
「支店の誰と話したんですか? バンクネガラの判断だと言ったのは誰ですか? これはとてもシリアスなことなのです」
銀行側はきっとオイラとの交渉が面倒だったので「バンクネガラが決めるので」と自分たちの責任を回避する嘘をついたのだろうが、まさかそれを聞いてこの客がそのバンクネガラに直接談判に行くとは思いもしなかったのだろう。
バンクネガラから直接電話をもらってしまった本店の担当者は
「とにかくこれから行内で状況確認をしてどうするか決めますから来週月曜日にもう一度連絡をもらえますか」
と我々に伝えるのがやっとだった。
これから支店の支店長や担当者は大目玉を食うはずだ。
とはいえ、我々だって死に物狂いで解決のために動くしかなかったのだ。
嘘をついた方が悪い。
このアピールが効いて、なんとか早く口座が元に戻ることをこの週末で祈るのみだ。