|
★ 中国深圳に駐在している高校時代の親友が出張でバンコクにやってきたので飲みに行った。
あと2年で定年。
中国深圳でサラリーマン人生を終えた後、そのまま契約社員としてしばらくどこかの工場に残るか、それとも昔からの夢だった居酒屋を開店するか、そんな話をした。
「どうせ開くならバンコクか西荻窪にしてくれ」
「西荻よりバンコクがいいなぁ」
「どんな店なら生き残れるかな」
「俺がカウンターに入る店だから当然『頑固おやじの店』だろうな。自分で釣ってきた魚をさばいて、食い方も俺が指示する的な」
「そうだな、頑固おやじ、任侠おやじの店はバンコクにもそんなにないからな」
「すぐ『出てけっ!』って叫ぶ店な」
「出てけ、が前提の店な」
「どれだけ長く追い出されないでカウンターにいられるか客が競うくらいな」
.
入店後に降り出した大雨は激しくなる一方で、会計を済ませるとホテルまでの数十メールを走ることにした。
通りを一本横断している最中に左側から左折してきたタクシーに衝突され、オイラは路上に跳ね飛ばされた。
すかさずケータイでナンバープレートを撮影した。
タクシーはそろそろと左側に寄るそぶりを見せたかと思うとそのまま走り去った。
幸い怪我はしていないようだった。
土砂降りの中を親友とホテルまで戻り、オイラはバイクで帰宅した。
トンロー通りの車道の真ん中に、きっと何かの事故で残されたのだろう大量の泥砂利が積まれていて、雨の中今度はその中に突っ込んでひっくり返った。
再度の幸い、後続の車がなかったので命拾いした。
これはなんだか大変な危機が迫っていると身震いしながら、スクムビット通りを慎重にアソーク方面へ向かった。
体は雨風で凍えそうだし、雨が激しく前方がよく見えなくて怖かった。
帰宅するとすぐに熱いシャワーを浴びた。
サーモメーターで見ると真っ青な体が徐々にオレンジ色に変わっていくのがわかっただろう。
海外小説に出てくる「熱いシャワー」とは全然違う。
あれは原文の「Hot Shower」をそのまま訳しているだけで、外国人はぬるま湯しか浴びない。
ベッドに倒れこむと、現実の感覚がすぐに薄れてきて眠りに落ちた。
おぉ!!いつになくハードボイルドですね!
>どいどいを<br>これがオイラの素だからね。