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★ 昼食後にオフィスの下にある銀行で受付番号をもらっていると銀行員が2人、
「助けてください!」
と声をかけてきた。
そちらを見ると1人の小柄な老婆が日本語でがなり立てている。
「彼女はどうも現金を引き出したいみたいなんだけど、パスポートがないとできないんですよ。説明してもらえませんか!」
オイラは
「引き出しですか?」
とその老婆に話しかけた。
老婆はがなるのをやめ、きょとんとした目でおいらを見ると
「あら、日本語話せるの?」
(日本人じゃボケェ!)と思ったが口には出さず
「パスポートが必要なんですが持ってます?」
と続けた。
老婆は何かブツブツ言いながらパスポートを出すと行員に手渡した。
銀行員たちのホッとした空気の動きが伝わってくる。
「あなた、日本人なの?」
「はい」
そばにいたマレー人銀行員も
「Yes!He is my friend!」
(いつからお前と友達だっての)
オイラが受付番号を持って座っていると老婆はいつの間にか隣に座ってこちらが何も聞いていないのに
「いや、それがね、千葉の方で大規模に不動産業をやっていてお金はあるのよ〜」
(何の話?)
「それで5年くらい前にMM2Hでペナンに住みだしてね、いえ、1年中じゃなくて11月から4月まで、ほらもう、冬が寒くてたまらんじゃない、だからその間はこっちの方がいいでしょ、だけどね、毎回ペナン行くのにKLで乗り換えんのも大変で、だって私の旦那が身障者で車椅子だしね、もうそれも大変で、それじゃあもうKLに引っ越そうっていうんで2年前からここなのよ、あなた何やってるの? パン屋さん?」
(ぱ、パン屋?)
「あ、そうじゃなくて車?」
(車?いきなりモノ?)
ここでこの老婆に「デジタルマーケティング」なんて答えても自分で「マジメか!」とツッコミそうなので彼女のわかりそうな言葉を選び
「広告関係で・・」
と答えている時にはすでに興味は失せていたようで
「こないだね、現金2,000万円、リュックに背負って持ち込んだのよ、なんも言われない、平気平気、身障者の旦那に背負わせてたからね、誰も身障者がそんなことするなんて思わないじゃない」
(ろくでもないなこのババア)
オイラがカウンターで手続きを終えると、ほっかむりをしたマレー人女性の行員が
「こんなこと聞いて失礼かもしれませんが日本人はみんな英語が話せないんですか?彼女、今まで何度もここに来ては話が通じずに怒鳴って帰っていくことを繰り返していて困っていたんです」
オイラはここでなんとか日本人の名誉挽回せねばと思い、
「彼女だけですよ、話せないのは」
とババアを切り離した。
出口に向かう途中、行内中の銀行員たちがオイラにサンキュー、サンキューと礼を言って送り出してくれた。
すみません。11月10日に間違ってつっこみました。お赦しを。