★ 常時3本から4本ぶら下がっている点滴もここまで30本を越えただろうか。一瞬たりともちょっと外していいですよということがない。

こんなものが身体に接続されていると、トイレに行くにもシャワーを浴びるにも着替えをするにも寝返りを打つにも厄介でかなわない。

ある取引先の日本人に、スクムビットの日本食屋の和風ハンバーグ定食が原因だと話したら、その人も半年前に同じお店の同じ和風ハンバーグ定食で食中毒を起こしていたことが発覚。今でもそのお店の名前を聞くだけでおなかが痛くなると言う。

「この分だと他にも犠牲者は大勢いるんでしょうね。和風ハンバーグ定食被害者の会を作りましょう！」

と書いてあった。

ここ東南アジアでは食中毒が出ると保健所が入って一発営業停止、みたいなシステムがないのである程度自分で自分を守らねばならぬ。

まあ、屋台で生もの食って当たるのは自己責任だが、日本人オーナーの和食屋でこんなにひどい目に遭うとは思わなかったぜ。

機能低下を起こしていた腎臓は、1日でだいぶ回復したらしい。

「このまま戻れば明日には退院できるし、戻らなければもう1日です」

と日本語も話すドクターが今回診で伝えてくれた。

★ 日本は連休真っ只中ですね。

さて、先ほど、無事退院してきました。ご心配いただいてどうもありがとうございました。

さすがに1日で体重が4kg減ったり、医者から「人工透析」という言葉を聞いて目の前が液状化していましたが、部屋に生還することができました。

病院から自宅までは歩いて15分程度なので、気分も天気もいいし、久しぶりに点滴から離れた自由を味わって歩いていこうと思ったのですが、ちょっと歩いただけでふらふらとしてしまったのでタクシーで帰ってきました。

この病院、ナースの数が多い、多い。

オイラたった3泊4日だったけど、全部で30人くらいのナースが入れ替わり立ち代りやってきましたからね。役割細分化し過ぎで、血圧測るナースと体温計るナースの2人組が4〜5チームもいて、その後ろに日本語通訳のナースがいたりするわけです。

そして病院から出るときに、ここのナースたちは、

「今度会うときは病院の外で会いましょうね」

と挨拶してくれます。

これは刑務所の看守が、刑期を終えて娑婆に出る受刑者に言う

「二度と来るなよ」

と同様の意味合いなんですが、彼女たちに微笑まれながら

「今度会うときは病院の外で会いましょう」

と言われるとなんだか目の前に桜の花びらがぱぁぁああっと舞う感じがします。

オイラなんか、ちょっと寝てる時にうんこたれとかして世話のかかる患者だったんだけど、そういうこと忘れちゃうわけです。

「そうだね。きっと外で会おう。今後は僕が君たちを楽しませてあげるから」

オイラ、うんこもすぐたれるですが、こういうセリフもすぐ出るんです。

★ 一昨日から出張者が5人滞在中。

オイラは食中毒がまだ完治せず、何となくふわふわと力の入らない状態なので、夕食を一緒に済ませたらいつもお先に失礼させていただく。

昨晩はうちのスタッフたちと出張者たちとの合同会食会。

抗生物質も服んでいるので、アルコールには一切手を出さずにひたすら水を飲みながら凌いだ。

早く完全復帰したい。

★ なんだかどうもいつまでも体調が本調子に戻らなくてもどかしい。

アパートを引っ越して1週間になるけれど、いまだに自炊をしていない。

そういう気力が沸いてこないのだ。

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オイラが食中毒を起こした日本食レストランの和風ハンバーグ定食では、半年前に知り合いが2日会社を休んだという話もあり、かみさんがさらに犠牲者が増えないうちに店に言った方がいいというので夕方行ってきた。

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店はまだ夜の開店前で日本人のオーナーが事務所で仕事をしているところだった。

タイ人のウェイトレスに呼び出されたオーナーは、ちょっと訝る様子で出てきて「はい、なんでしょう？」と言った。

オイラはまず自分の名前と居住地を伝え、先々週の水曜日の昼食で食べたハンバーグ定食で4日間入院して現在に至るまでの顛末を説明。他にも同様の症状を持った知人がいることから今後重大な事態に発展する前に警告にやってきたのだと話した。

60歳くらいに見える日本人オーナーは、オイラの話を聞いた後でこう言った。

「うちでは、タイという場所柄、本当に生ものには細心の注意を払っていて、刺身以外、全ての食材は必ずしっかりと火を通すことを徹底してきました。他の店では半熟卵なども出しますが、うちではそういったものもやめてきたんです。だから、調理場、もしくは調理上での問題があったとは考えられないのですが、もしかしたら仕入れの段階で問題があった可能性はあります。これからすぐに仕入れ先や食材についても再点検をします。

今回は本当に申し訳ありませんでした」

オイラは賠償請求に来たわけではないので、次の犠牲者発生を回避する助けになったのならばそれで目的は達した。

それでも、きっとよほどのことがない限り、この店にはもう来ないだろうなと思いながらガランガランと音を立てる扉を閉めて外へ出た。

★ 今日は昼にケージとソイ11で待ち合わせてDOSA KINGで南インドのDOSAをランチに。DOSAは薄ーくパリパリに焼いたクレープにいろいろな食材を包んだり、カレーと共に食す料理。オイラは、オニオン、ポテト、オクラなどと一緒に食べた。すごく美味しかった。

午後は久しぶりに自分で料理を作ろうと思い立ち、かみさんに勧められた豚バラ肉を使ったポッサム。

味噌やコチュジャンやねぎで味噌タレを作り、表面に少し焼き色を付けた豚ばら肉をゆで汁の中でじっくり茹でる。

茹で上がったら粗熱を取り、横に等分に切った肉を縦に切り分けると肉汁が漏れ出ずにジューシーな豚肉が楽しめるらしい。

皿に盛った肉にタレを付けてレタスに巻いて食べてみる。

肉が柔らかくてジューシー。そして素晴らしい味噌タレの味が口の中に広がってうっとりとする。

素晴らしい・・・。素晴らしすぎる。

キンキンに冷えたビールで一人乾杯。

ちょっと自分に満足する週末の締めくくり。

★ 娘がブリスベンで就職が決まった。

日本じゃなくて、マレーシアでもなくて、タイでもなくて、オーストラリアで決まったということは、これから彼女の当面の人生のステージはオーストラリアということになるわけだ。

これは留学とはちょっと違うから、本当にこれから離れて暮らすんだなぁという寂しさもある。

だけどとにかく頑張って欲しいと祈るのみ。

彼女の探していた仕事はオイラもアドバイスができるマーケティング領域だったこともあって、毎日モバイルにメッセージが入る。

遠く離れて暮らすけど、毎日メッセージや写真を交換して身近に感じることができる。

オイラがタイ、かみさんがマレーシア、娘がオーストラリア、息子が日本。

いつか家族4人、一堂に会することができる日まで、モバイルが家族をつなぐ。

★ 今日は久しぶりにマレーシア起業先輩とタイ飯屋で晩飯。

エカマイにあるタイ人にも安くて美味いと人気のお店らしい。

名物はガイヤーン(鶏のあぶり焼き)とコームーヤーン(豚のど肉のあぶり焼き)。

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食べて飲んでデザートまで食べて一人200バーツ(約550円)也。

★ 昨日の朝、営業部長のKnight(ナイ)がオイラのところに来て

「Junさん、今日の午後お時間いただけませんか？　2時から6時頃まで」

と言った。訳を尋ねてみると、こういう話だ。

今日からインパクトチャレンジャー(タイ最大の展示会場)でアジアフード展があり、そこに食品メーカーがどっさり参加する。手当たり次第にブースを回り、名刺交換して話をつなぎ、うちの新規顧客先として改めてアプローチしたい。

確かに食品、飲料メーカーはうちのソリューションのいい提案先だ。それが一ヶ所にまとまっているところで一気にコネクションをつくるというアイディアと気概はさすがナイだ。

だけど、なんでオイラまで行く必要があるの？

「Junさんを日本からのバイヤーだと思うので、話がし易いし、名刺ももらい易いです。どんどん回りますから」

その上、

「あなたも自分の仕事に活かすために現地メーカーの状況をちゃんと把握しなさい！」

と奈須君まで引っ張り出された。

とにかく優秀でパワフルな営業部長ナイなのである。

現地に着くと展示会場のでかさに奈須君びっくり。

「Junさん、会場内は試食し放題ですよね。昼飯あんなにがっつり食べてこなきゃよかったなー」

とつまらないことを後悔している。

会場に入ると、そこは巨大なデパ地下。大人でもワクワクと気持ちが浮き上がってくる光景だ。

営業部長のナイ(左の写真中央の女性)は、部下のファイと奈須君とオイラを引き連れ、どんどんとブースに入っていく。

商品の話をするため試食品を取り上げてはオイラと奈須君に渡す。

その度にいちいちバイヤーらしく

「うん、これは日本でどうかな？」

「そうっすね、ちょっと甘さが・・・ですかね」

と小難しそうに首を傾げながら奈須君と寸劇をしなければならない。

見ると試食品を食い終わらないうちにナイはもう次のブースに進んでいる。

最初は「ガイド付きの巨大なビュッフェだ！」と喜んでいたが、これだけ料理、お菓子、飲み物の試食品をわんこそばのように食わされると次第に苦痛になってくる。

1時間も経つとちょっと気持ち悪くなってきて、ブースに入って試食品をオイラと奈須君に手渡すナイが鬼に見えてくる。

奈須君もちょっともうきついっす、と呟いている。

オイラも食いながら「うっぷ」と戻しそうになりながら詰め込んでいる。

ナイはこんなペースじゃ網羅できないとばかり足を速める。

その上、各ブースからサンプル品もどっさりもらってきて

「Hiro(奈須君のニックネーム)、これ全部持って帰って明日スタッフのおやつにして！」

と奈須君の手提げ袋にどんどん放り込んでいく。

散々試食をし、サンプル品をたっぷりもらい、商品に文句までつけたりしている上に、あとでうちのモノを売り込んで買わせようっていうんだからそのツラの皮の厚さったらハンパない。

もはや営業の神である。

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それにしても会場を回ってみて「日本っぽい」ものの多いこと。怪しげな商品もいっぱいあって、これぞアジアフード展の真骨頂だ。

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最後のKCFはちょっとしばらく何が違うのかわからなかった。

そして、もちろん、晩飯は食えなかった。

★ 一昨日夜、かみさんがバンコクにやってきた。

うちのスタッフはかみさんの作るカリフォルニアロールを楽しみにしている。

以前オフィスに差し入れたときに皆「寿司、寿司」と喜んで、それ以来かみさんが来ると知ると「寿司、寿司」と叫び出すのだ。

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午後は目の専門病院へ行った。

最近視界にもやっとしたものや黒い点が浮かび、それがフワフワと動いたり、見ているものをぼやかしたりするので診てもらおうと思っていたのだ。

診察に当たったのは50歳くらいの男装の女性ドクター。

症状を説明すると、ニコッと笑って

「大丈夫、私も同じです」

と言った。

それから検査室へ移動して様々な検査と点眼を繰り返し、再びドクターのいる診察室へ。

「検査の結果、問題ありませんでした。水晶体もきれいです。年齢と共に眼球内のジェルが縮小し、目の動きに合わせて動くためにもやっとしたものが動いて見えますが、それは特に問題ではありません」

ただし、今後次の3つの自覚症状が出たら、医師の診断を受けるように言われた。

1.　もやっとしたものが大量に増えた

2.　目を動かしたときにフラッシュがたかれたようになる

3.　視界の中に動かない影がある

特に3番は危険信号で、場合によっては手術が必要らしい。

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夜はアパートの部屋で奈須君と一緒にかみさんの手料理を食べ、ビールやワインを飲んだ。

久しぶりに料理とおしゃべりを楽しむ宴。

★ オーストラリアで就職した娘は、頑張って営業しているようで毎日仕事が終わると「今日の成果」をメッセージで送ってくる。

成約獲得レースのような営業活動は性格に合っているようで、嬉々とした日々を送っていて、少しホッとしている。

かみさんは今日の午後マレーシアに戻っていった。

今日はぼちぼち仕事を終えて部屋に戻るけど、ちょっと静かだろうな。

今晩はきんぴらごぼうと茄子の炒め物と銀ダラを焼いて晩飯にしよう。