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★ 防犯カメラで犯人を捕まえた。
何度も巻き戻しと再生を繰り返しながらモニター画面に目を凝らし、犯人が財布に手を伸ばす動作を特定した。
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かみさんがアパートのロビーに財布を落としたかも知れないと言うので管理オフィスに届いていないか確認に行った。
オフィスのスタッフは「届いてない」と素っ気ない。
仕方なく部屋に戻ろうとロビーを通った時に天井にある防犯カメラが目に留まった。
「そうだ、これに何か映っているかも」
再び管理オフィスに戻りスタッフに防犯カメラの映像を見せてもらえないか、と頼む。
かみさんがロビーにいたのは午前10時。
その時間のロビーの映像を呼び出し、画面右上の時間表示を見ながらそこにいるかみさんを確認。
彼女がソファーに座っていた時に手元にあった財布が、立ち上がった時にはなかった。
本人気付かず、床に落としていたのだ。
「そのまま画面の再生を続けて見せてくれ」
オイラとかみさんとオフィスのスタッフが3人で動きのない映像を見続ける。
3分ほど経ったところで掃除のおばちゃんが入ってきて荷物を片付けて出て行った。ソファのそばには近寄らなかった。違う。
8分後に1人の男性がロビーに入ってそのままソファーの脇を通ってエレベーターに乗り込んだ。これも違う。
14分後、1人のおばさんが入ってきた。
ソファの前のテーブルに持っていた荷物を置き、チラッと防犯カメラを見た。
ケータイを取り出し、少しいじった。
それからソファに座る。
テーブルの上の荷物を膝の上に移動させるのと同時に、体が少し屈み、荷物を持つ右手の反対側の左肩がぐっと下がり、左手を床に伸ばす動作。
「これだっ!」
オフィススタッフが叫んだ。
もう一度再生する。
このおばちゃんはここでソファに座ってこの動作を終えるとすぐに立ち上がってエレベーターに乗り込む。
ここでソファに座ったのはこの動作をするためだとすぐにわかった。
「この人を知っているか?」
「いや、知らない。ここの住人ではないからどこかの部屋のメイドだろう」
彼はセキュリティに電話をすると、事情を説明している。
オイラがそのまま現在の防犯カメラ映像に切り替えられたモニター画面を見ていると9つに分割された映像のひとつ、エレベーターの映像にさっきのおばちゃんが映った。
それを見たスタッフも
「あ、今、犯人がエレベーターに乗っている!」
我々に緊張が走った。
3人はすぐにオフィスを飛び出ると、スタッフは大声でセキュリティを呼ぶ。
エレベーターを降り、ロビーに出てきたおばちゃんに声をかけ
「ねぇ、あなた、財布・・・」
とかみさんが声をかけると、おばちゃんはすぐにかばんからかみさんの財布を取り出し、
「あ、これね」
と差し出した。
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我々は全てを知っている。防犯カメラの映像を通して。
だからそれ以上何も問うことはない。彼女から財布を受け取るとただ挨拶を交わしただけのようにそのまま彼女を解放した。
彼女は両手の荷物の重さ以上に両肩を落とし、俯いたままアパートを出て駅までの道を歩いて行った。
「うちの防犯システムが財布を取り戻した」
そう言ってスタッフは胸を張った。
改めて気付かされた。私たちの行動はどこからでも監視されている。
防犯カメラで。
みつかってよかったですね。<br>私は先日込み合うスーパーマーケットの中で携帯電話を落としたらしく、オートペイマシーンで駐車代を払う時気がつきました。だめ元で自分の番号に電話したら、しばらくの呼び出し音の後、中華系らしき女性が、「メイドが拾って私に渡した。OOで待っているので取りにきて」と。急いで行くと、気の良さそうな女性が、「ごめんね、電話ケースに入っていたメモから、落とし主は日本人かなあと思ってたけど、やっぱり。」といって、にっこりと渡してくれました。見つからないかも、と思っていたので、その方のご親切に感激しました。ちなみにメモにはごぼう・だいこん・・・などど書いてました(笑)
>ゆう<br>それはまたいい拾い主に当たってラッキーだったね。そのごぼう、だいこんに親近感を感じてくれたのかも。