マレー人たちのお盆、ハリラヤ

レー人たちの家族が一同にカンポン(田舎)に集まる日それがハリラヤ。彼らの宗教はイスラム教で、ハリラヤもその宗教行事の季節にあわせて行われます。マレーシアで最大のハリラヤはハリラヤプアサ、海外では「イード祭」と呼ばれ、イスラム暦のシャワル月1日に行われます。シャワル月1日とは断食の月(ラマダン月)が明けた日で、イスラム教徒たちは持ちあわせの中で最高の服を着て一同に集います。もちろんハリラヤとはいえ、マレー人以外のインド系、中国系イスラム教徒たちもマレー人たちと同じように集まり、お祝いをします。「セラマットハリラヤ・アイデルフィトゥリ」といいながらお互いに握手をしあいます。この時に「マアフ・ザヒルダンバティン」と付け加え、今までしてきたお互いの過ちを認め、お互いに許しあいます。この「セラマットハリラヤ・アイデルフィトゥリ」というのはマレーシア、インドネシア両国で使われますが、海外では「イードムバラク」といわれてるものと同じです。
ハリラヤは夜から始まります。イスラム社会の一日の始まりが日没からだからです。(このことからイスラム関係のマークに月と星が使われる。)写真のようなヤシの木に囲まれた高床式の家に家族が集まり、新月のおとずれとともにタクビールと呼ばれる合唱を行います。この合唱はモスクや集会所などでも行われ、テレビやラジオでも中継されます。このタクビールが夕闇に響きわたることによってイスラム教徒たちの心は去って行く神聖なラマダン月への哀愁と一月間の断食を終えた喜びとの複雑な心境になります。日本人の心でたとえると、卒業式に抱くような感情です。しかし、ラマダン月4日目で自主ハリラヤ(笑)を迎えてしまった人達も同じような感情になるのかは知りません。

カンポンの家々にはピーターといわれる小さなかがり火のようなものが数日前から家の玄関にならべられます。このピーターには灯油が入っており、夜中まで燃えつづけます。(ピーター1個50セントです。)このピーターは日本のお盆のかがり火のような趣で遠くから集まってくる家族達への想いをかもしだしています。
4年ほど前までは別の風物詩として花火がありました。子供たちが棒花火でわいわいさわぐ様子は見ていてうれしいものでした。ただ、近年花火による事故があとを絶たないために政府が花火を禁止にしてしまいました。

一夜明けてハリラヤの朝。写真にあるのはハリラヤ当日の子供たち。子供たちは各々近所の家々を歩きまわり、挨拶をしてお年玉をかき集めます。多い子は一人で20件以上の家を回りひと財産(笑)をかき集めてしまいます。お年玉の額はその年の経済の状況によって変わりますが、3歳ぐらいの子供で50セントから2ドルといったところです。たくさんもらうというよりも、家々を回って楽しみます。大人たちは男性と、忙しくない女性がイードの礼拝というものを行いにモスクや集会所に出かけます。そこでは2つの説法がその集会のリーダー(イマムと呼ぶ)から述べられ、その後に礼拝と呼ばれる決まった動作を全員で2回行います。イスラムではこの礼拝が始まるまでに決まった額の寄付を行うことになっています。寄付は一人頭2ドルから3ドルぐらいで、大人から子供まで全員に義務つけられ、家族の長が全員分を払うことが風習となっています。この寄付を使って貧しい人たちに教科書を買ったりします。
日本では家族が集まると墓参りにいきますが、マレーシアでも同じようなことが行われます。イードの礼拝の後に家族が全員で墓参りに出かけます。イスラムの墓は日本のように家族で入るものではなく一人一人が土葬で埋められます。マレーシアの普通の人の墓は埋められた体の頭と足のところに石を置きます(写真参照)。墓参りでは丁度体があった場所に土を盛りそこにありあわせの花をちりばめそこに家族一人一人が水をかけて家族の絆がまだつながっていることを確認しあいます。なくなられた非イスラム教徒に対しても彼らの敬意は同じで、礼拝は行いませんが、その人へ平安への祈りは同様に行います。この時の彼らの感情は日本の墓参りのときに抱く先祖への想いと同じといっていいでしょう。
ハリラヤ2日ぐらいから手があいた家族から親戚の家々を挨拶周りします。この親戚周りのお出かけは「ジャランジャラン」とはいわず、「ラヤラヤ」といいます。ラヤはもちろんハリラヤのラヤです。ラヤラヤする先の家には必ずハリラヤ料理が用意されています。ハリラヤ料理にはいろいろなものがあります。その中で代表的なものがクエラヤと呼ばれているものです。料理というよりはお菓子といったほうがよく、クッキー、ケーキ、せんべいの類です。左の写真は上からビスケット、ドドイ、レマンで、いずれも全て一般家庭で作れるものばかりです。その他にハリラヤを代表するものにケトゥパットというものがあります。おにぎりをきれいに編み上げたやしの葉っぱで包んだもので、ハリラヤのシンボルデザインとしても知られています。でもここ数年でビニールパックのケトゥパットが主流になったため、伝統的なケトゥパットはなかなか見られなくなってきました。
ラヤラヤしに人の家をたずねると玄関ごしに大きな声で「アッサラームアライクム」という挨拶をします。家の中から人が出てくるとすぐさま「セラマットハリラヤ」とか「イードムバラク」という言葉をかけあいます。「マソッ、マカン・マカン・・・(まーあがって食事でもしていってください)」ともてなしを受けます。
こういった感じでハリラヤ約4日のカンポンは事実上のオープンハウス状態になります。もし機会がありましたらマレー人のカンポンの家を「セラマットハリラヤ」とたずねてみてください。彼らはおどろくでしょうが、きっと厚いもてなしをしてくれることでしょう。

  
 
 


セラマットハリラヤ・アイデルフィトゥリ!