「いよいよドリアンのシーズンがやってきました。私の親戚がやっているドリアン農園で穫れ立てドリアンを食べませんか」
クアラルンプールから南北ハイウェイを北上すること約1時間半。イポーの手前にビドーというインターチェンジがあり、ここで高速道を降りる。ここからビドーの町を越え、国道を西へ走ること約1時間。道路の両脇には点々とマレー式高床住居が続き、ペラ川の濁流が見えてくる。ワニが今にも飛沫を上げそうな茶色い水面に沿って更に奥へ入ると目的地、カンポン・ガジャーに到着だ。ドリアン農園と言ってもそこは整然と人工的に作られた農園ではなく、まさに原生林。蛇のようにうねる細い泥道の両側には、ひときわ高いドリアンの木々を周りから支えるように様々な果樹林が鬱蒼と茂っているのであった。
原生林の中に突如現れたマレー式高床住居。山下さんのご親戚、マンさんご一家の別荘だ。この辺りの住居はほとんどそうらしいが、みんな通常の生活を営む家は別に持っており、ドリアンの季節になるとこうした別荘にやってくる。そして家族や親戚でドリアンを楽しんだり、業者に販売したりする。まさにドリアン別荘、なんとも羨ましいライフスタイルだね。
早速上がり込むドリアン狩りツアーの面々。ドリアンはほとんどの場合、夜明けと共に枝から落下してくる。タイのドリアンは枝になっているうちに収穫するが、マレーシアのドリアンは熟れて落ちて来たのを拾い収穫するという違いがあるのだ。ともかくその落ち立てドリアンのご相伴にあずかろうというわけである。マレー人のこうしたお宅では大家族が床に車座になって食事をとる。でも僕ら日本人には違和感がないね。
右の写真は、今回いろいろとお世話になったマンさん一家の奥様と坊や。日本人がこんなにいっぱいやって来たもんで子供達も物珍しそうに眺めていてかわいい。この季節になると毎日、千客万来で大忙しらしい。でもその笑顔には本当に暖かなホスピタリティが感じられてありがたい気持ちになるんだな。
そしていよいよ大盆で次から次へと運び込まれる穫れ立てドリアン。山下さんによると今年はエルニーニョなどの異常気象のせいもあって例年の5分の1くらいしか収穫がないらしい。ひとつひとつのドリアンも例年よりいくぶん小粒ということだった。しかし、うす〜い黄色の果肉は艶やかで美味しそう。みんなすぐにでも手を伸ばしてありつこうという体勢に入る。
が、その前に手を水で濯いで洗う。このやかんのようなポットから出た水は、下にある受け皿の穴から中へ溜まっていく仕組み。日本もその昔はタライの上で手や足を濯いだ時代もあったが、これは何とも優美な雰囲気があるね。都市部のマレー人家庭ではもうあまり使わなくなってきたみたいだけど、伝統や風習が色濃く残るカンポンでは、こういう細かい文化に触れられてそれだけでも楽しい。大家族用にたくさん用意されている。
そして待ちに待ったドリアンの宴は始まる。勢いよくかぶりつくドリアンフリーク達。辺り一面にはあのドリアンの芳香が漂い、ピチャピチャ、ウグウグという音が支配する。「おお、これはうまいぞ」「あ、これはだめだ」「それやめてこっち食べてみ」「どれどれ」・・・とドリアンにも一家言持つ連中はその品評にも喧しい。瞬く間になくなっていくドリアンの大盆と引換にまた新たなドリアンの山を作った大盆が運び込まれ、ドリアンわんこそば状態だ。 ![]() |
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| いや〜、たまらん たまらん。 種をしゃぶり尽くす 健さん |
んっもー、 あたい幸せーー! 目がいっちゃってる naoちゃん |
だからぁ、 私はこれだめ なんですってば。 涙を浮かべる tomoちゃん |

なんだか珍しい連中がドリアン食べてるな〜とベッドの陰から様子を伺うマンさん一家の子供達。ごめんね、騒々しくてね。右の写真は、ドリアン食いに飽きた人達のためにお口直し。ドリアンとココナッツミルクで作ったドリアンジャム(どこがお口直しじゃ)とイカンビリス(小魚の干したもの)をサンバルとチリで和えたもの。これを餅米ご飯と一緒に一口大にして食べるととても美味しい。マレーの家庭の味やね。こんな風にあっち食べこっち食べしていると、もう腹一杯になってしまうのだ。まだまだ外にはいろいろな果物がなっているし、腹ごなしに農園散策と参りましょうかと、一同腰を上げるのであった。 ![]() |
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| ランサックの実。 葡萄のようになる。 |
ジャックフルーツ。 |
艶やかに輝くライムの実。 |
青いバナナも 辺り一面に。 |
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| トロプーの実。 味はビワのような マンゴスティン の様な甘さ。 |
カカオの実 青色から黄色に変わる と食べ頃。 |
カカオの果肉。 種の周りの果肉は 甘酸っぱくて美味。 |
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| 高い枝にたわわに なるドリアン。 夜明けに落ちる。 |
落ちてころがるドリアン。 |
高床式住居の縁の下 がドリアンショールーム。 |
「んじゃ、これを」 でマンさん家のお兄さん が殻を割ってくれる。 |
みんなで林の中を歩いていると、ドリアンを拾っている近所の子供達に出会う。カメラを向けると恥ずかしそうに笑いながら寄り添う。それでもドリアンを掲げて見せるところなんざ、何が大事なのかをちゃんとわかっているのだ。えらいえらい。こうして「落っこってる」ドリアンを毎年食べてる彼らからすると、棚の上で1万円の値札と共に干からびているドリアンを売っている日本ていうのはとんでもないところだろうな。同じ地球上でもやっぱり凍死したり飢え死にしたりしない国の人々は、人生をのんびりと生きることができて幸せなんだろうなぁとつくづく思ってしまう。素足で大自然の中を走り回る健全なるガキどもよ。また来年もここで会おうではないか。美味しいドリアンの収穫を喜びながら。
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