ブミプトラ政策

大宮中央高校 朱通順子さんのご質問にお答えするためにこのページを作りました。


のブミプトラ政策には、人口の約6割を占め、もともとこのマレーシアの土地に代々住みついているマレー系の人々に対し、「マレーシアは自分達の国なんだ」という民族意識と自主独立の気運を高めるという政治的な意味合いがあります。
そのためには、極めて優秀で強力な経済観念を持った中国系の人々(中国本土から渡ってきてマレーシアに住みついた人々)のこの国に対する経済的支配をある程度抑制する必要があるのです。
マレーシアには華人と呼ばれる中国系マレーシア人が人口の約34%を占めています。
もともと第2次世界大戦後、アジアなど一部の新しい独立国家ではとても強力な華人の経済活動に対する抑制政策を採ってきましたが、1971年にスタートしたこのマレーシアの「ブミプトラ政策」はその一例でもあります。具体的にその政策のいくつかを紹介してみましょう。

1 教育におけるマレー人優遇
教育現場では、初等教育から大学までマレー語を国語とし、中国系の学校でも必修科目としています。また、入学定員も人口比率を大きく上回る形でマレー人の割当が高く、同じ学力でもマレー人と非マレー人(華人、インド系)では難易度が大きく異なります。こうしてマレー人の教育水準を高めようとしているわけです。

2 就職におけるマレー人優遇
教育と同じように就職機会もマレー人の方に大きく門戸が開かれています。特に公務員、政府系の基幹産業などはマレー人を優先的に採用します。

3 住居におけるマレー人優遇
民間の開発した住宅や工場でもそのうちの一定割合はマレー人のためにキープしておかねばなりません。そのためマレー人は競争なくいい条件の物件に入ることが出来ます。住宅等の分譲物件はマレー人に対してのみ一定額安く販売することになっています。

4 銀行融資におけるマレー人優遇
個人でも企業でもマレー人は優先的にいい条件で融資を受けることが出来ます。

5 会社経営上のマレー人優遇
マレーシアで会社を設立する場合、強制的にマレー人を株主にしなければなりません。能力があろうとなかろうと役員や社員の一定割合はマレー人でなければいけません。また、マレー人が100%出資している会社は、政府系の仕事を優先的に受注することや業務上の特定の免許などを優先的に発給してもらうことが出来ます。


その他にも細微にわたり全ての分野でマレー人が非マレー人に対し優遇されるような施策が施されています。このような政策によってマレー人の経済的社会的基盤を強くし、生活水準を向上させようとしているわけです。


(質問1)民族間の経済格差は解消の方向に向かっているのか

一定の成果は挙げられていると言われています。ただ、人間というのは保護され、優遇されると逆にどんどん甘えが出てきてしまうという側面もあります。どんなに優遇されてもその人達に本当の独立心や向上心がなければいい結果は生まれません。逆に華人のように逆境の中での生活を強いられるとそこには新たな知恵が生まれ、生活力が増し、どんどんたくましくなっていくのです。例えば、上の4番5番を例にとると次のようなことが日常化してしまっています。

華人は適当なマレー人を探し、なにがしかのおこずかい(名義料)をあげて名前を借りる契約をします。その借りた名前で会社を設立します。マレー人の名義の会社ですから政府からたくさんメリットを貰い楽々と会社を大きくしていきます。名前を貸したマレー人は働かずになにがしかのおこずかいが貰えるのでこんな楽なことはないと思ってしまいます。いつしか国が自分達のために制定した多くのメリットを、働いて働いてお金持ちになりたい中国系の人達に「売ってしまう」わけです。こういうことがあって本当の経済格差又は経済力格差はなかなか解消しません。


(質問2)マレー系以外の民族の人々はこの政策をどのように受けとめてい     るのか

もちろん反発はあります。以前、マレー人と華人の間で暴動にも発展しました。しかし、マレーシアのマハティール首相はマレー人を代表し、「マレー人は華人より経済観念、勤勉さで劣っている。だからこれはハンディキャップです。」と大胆にもマレー人が劣っていることを認めることによって中国系の理解を得ることに成功したのです。現在は非マレー人がブミプトラ政策を逆手にとってそのメリットをかすめ取ることをある程度黙認することでそのバランスが保たれているようです。

本来マレー人も華人もインド系の人達も同じマレーシアの国民ですから、「ブミプトラ政策」などないところで平等に競争していくのが理想だと思います。マハティール首相も自国のマレー人がそのアイデンティティをしっかりと確立し、堂々と世界の中でその存在を主張していけることを夢見ています。しかし、「笛吹けど踊らず」、そのジレンマがマレーシアの現状と言えそうです。




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